#149 株式会社の誕生

世界で初めての株式会社といわれているのが、オランダやイギリス、フランスでつくられた「東インド会社」です。当時のヨーロッパでは、肉を保存するための香辛料を調達するためにアフリカやアジアを目指す人が大勢いました。

 

しかし、当時の造船技術での航海は大変大きなリスクがあり、無事に香辛料を持ち帰ることができれば大儲けですが、航海に失敗すればすべてが水の泡です。自分の人生をかけるような大勝負であったといえます。

 

船を準備するのも船長や船員を雇用するのも、個人の資金で賄っていたため、何とかしてそのリスクを低減する言葉出来ないか…。そこで考え出されたのが「共同出資」の仕組み、つまり「株式会社」の前身になります。

 

ひとりで資金を調達するのではなく大勢でお金を出し合う(出資する)ことで個々の負担を軽減することができ、無事に香辛料を持ち帰ることができれば利益を全員で山分けすることができます。万一、航海に失敗しても自分が出したお金以上のものを失うことはありません。(有限責任)

 

当時は商売をすること自体が大変なリスクであり、破産した場合に救済が受けられるような法律もありませんでした。この「共同出資」という考え方は、アインシュタインが人類最大の発明と評した「複利効果」に次ぐような画期的な発明だったのです。

 

みんな(株主)でお金を出し合う(資金調達)ことで船を造り、腕のよい船長(経営者)を雇用する。その船長は、航海を共にする航海士や船員(従業員)を集めることになりました。船長はどの地域へ行ってどんな香辛料を採ってくのかを出資者に報告(経営計画)します。それが出資者一同に承認(株主総会)されれば、出航することができます。

 

香辛料を持ち帰った船長と船員たちは相応の報酬(給与)を受け取り、出資者(株主)は必要経費を除いた利益(純利益)に対し、出資割合に応じた報酬(配当)を受け取ることになります。

 

「株式会社」の輪郭が見えてきましたね。現在の株式会社も基本的には東インド会社と同じ仕組みでできているのです。

 

#148 日本銀行=中央銀行=発券銀行

日本銀行の役割のひとつとして、紙幣の発行があります。日本銀行が唯一の発券銀行だとしても、いつでもどれだけでもお札を発行できるということはありません。当然、そこには厳格なルールが定められています。

 

ひと昔前であれば、お金は「兌換紙幣」と呼ばれるものであり、「お金は金(ゴールド)交換できる」という信用を得ていました。このように、金(ゴールド)の量がお金の信用を担保する仕組みのことを「金本位制」といいます。金(ゴールド)の保有量に比例して紙幣を発行することができるというシンプルな体制でした。

 

しかし、金本位制ではその国の中央銀行が保有する金の量でしか紙幣を発行できないため、世界中の政府にとって経済や市場をコントロールするために不都合な面が多く、金融政策に限界があるとして、当時の先進諸国は金本位制をやめてしましました。

 

それ以降、中央銀行が保有する金の量に関係なく紙幣を発行できるようになりました。これが、「金本位制からの離脱」という歴史的な出来事であり、紙幣は「兌換紙幣」ではなく「不換紙幣」となりました。つまり、金(ゴールド)とは交換できない紙幣の誕生です。

 

金本位制でなくなった瞬間、それまでの紙幣はただの紙切れになりました。しかし、「これはお金だ」という信用・信頼、言い換えれば「共同幻想」があれば、それを「お金」として疑う人はいません。

 

商品券でも、ポイントカードでも、電子マネーから暗号資産に至るまで、「お金」の歴史から見ても、みんなが「これはお金だ」と思い込んでさえいれば、相応の価値として成立し、通用し続けるのです。

 

金本位制でなくなった現代では、何を基準に紙幣の発行を行っているのでしょうか。それは、「国債」です。国債というのは一言でいうと「国の借金」に他なりません。現在の日本銀行は、政府の発行する「発行済み国債」の量によって紙幣を発行する量を決定しています。

 

毎年国会で予算案が通るたび、財源を上回る部分の金額が国債として発行され、それを一般の銀行や個人が購入しています。中央銀行はその国債を買い上げることで、その額の紙幣を発行しています。

 

第二次世界大戦前までは、国が借金をするために国債を発行すると、日銀がそれを直接買い取り、その場で政府にお金を渡すことができました。政府はそのお金を戦費として充てていたわけですが、それが常態化すると何が起きるかというと、必ずインフレが発生します。

 

お金を刷りすぎて、お金の価値そのものが下がってしまうことを言います。実際、1930年代に日本はとんでもないインフレを経験しています。その反省から、戦後は政府が発行した国債を日銀が直接引き受けるは出来なくなっています。

 

現在の日銀は、政府が発行した国債を購入した各銀行から買い上げる形で紙幣を発行し、各銀行にお金を渡すようにしています。こうすることで政府が際限なく国債を発行することを抑制するだけでなく、お金の流れの調整弁としての役割も担っているのです。

#147 時間分散

長期投資かつ分散投資の重要性は以前の投稿においても述べたとおりです。分散投資は、資産クラスの分散以外に、時間分散という考え方があります。時間をずらして投資するということです。

 

100万円が手元にあるとします。これを一括投資するのではなく、例えば20万円を5回に分けて投資することをいいます。なぜそのような手間をかけるのでしょうか。それは投資する絶好のタイミングを正確に判断することができないからです。

 

あるとき絶好のチャンスと思って購入した株が、さらに下落することがあります。最初に大きく下げたところですべての資金を投じてしまうと、さらに下げた時に追加投資できないだけでなく、投じた資金に大きな損失が生じます。

 

複数回に分けて投資することで、さらに安くなった時に追加投資できるため、平均すれば買付単価を下げることができます。それが「積立投資」の考え方であり、この時間分散によって得られる効果をシステム化したものといえます。

 

毎月一定金額で購入し続けることにより、価格が高いときは購入できる株数は少なく、価格が低いときには買える株数が多くなるため、相対的に高値で購入できる株数が少なくなる一方、安値で購入できる株数が多くなります。

 

このように、全体で平均したときの買付単価が下がっていくような購入手法を「ドルコスト平均法」といいます。ドルコスト平均効果は積み立てていく中で、徐々に効果が発揮されます。マーケットは長期的に見た時、上昇・下落を繰り返すので、長期にわたって積立投資を継続することにより、その効果が高まっていくのです。

 

将来的に、月々の積立金額を増額したり、下落トレンドを見極めてスポットで購入すれば、さらにドルコスト平均効果は高まります。とにかく、長期運用・資産分散・時間分散を実践することにより、堅実な資産形成を実現することができるでしょう。

 

メリットの少ない現預金での保有は生活費の6ヶ月分程度を上限とし、それ以上の余剰資金は戦略的に資産配分を行い、投資することをお勧めします。

#146 性質の異なる資産を組み合わせよう

世界経済は人口の増加に伴いこれからも成長を続けていきます。その成長のシナリオを前提にすれば、長期投資は短期的なボラリティなど誤差であり、十分なリターンが期待できる投資手法です。ここに分散投資することでリスクコントロールすることも可能になるのです。

 

資産クラス分散におけるポイントとしては、値動きの方向性が異なる資産の組み合わせ、つまりマーケットが急落したときにすべての資産価値が同時に下落してしまうリスクを軽減させることにあります。

 

全体の株価が上昇トレンドにある場合、長期金利が上昇するため債券価格は下落します。つまり、株式と債券を組み合わせたポートフォリオを持っていた場合、株式の値上がりを債券価格がマイナスさせてしまいますが、一般的に株価の値動きは債券のそれに比べて大きいため、プラマイしてもプラスに落ち着きます。

 

逆はどうでしょうか。当然、プラマイするとマイナスに振れることになりますが、株式100%でポートフォリオを構成しているのに比べれば、下落トレンドにおいてもマイナスダメージを低く抑えることが可能になります。

 

国内だけでなく、海外の株式や債券を組み合わせることにより、さらに資産クラスを分散する効果が高まります。日本国内の景気が冷え込むと、金利が低下するため投資マネーが日本から海外へシフトします。したがって、日本株が下落しても、海外市場に投資している分については、円安による為替差益が得られるため、国内での資産価値の目減りを軽減できます。

 

では、国内の株式・債券と、海外の株式・債券をどのような比率で分散すべきかということになります。迷ったときの「均等法」。それぞれ25%ずつ分散保有するという手法があります。難しく考えずとも、そのように4分の1ずつ均等投資しても、一定のリスク軽減効果が期待できるといわれています。

#145 アクティブ or インデックス

投資信託の運用戦略として、アクティブ運用とインデックス運用があります。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など、市場全体の動きを示す基準となる指数に連動した運用実績を目指すのがインデックス運用です。

 

これに対し、上記の指数をベンチマークとしてそれを上回るリターンを目指した運用をするのがアクティブ運用です。つまり、アクティブ運用でインデックス運用を上回るためには、ファンドマネージャーが日々の情報収集や銘柄分析を行うことでリターンの追求を行っているということです。

 

つまり、アクティブ運用の投資信託ではファンドによって運用成績にバラツキが生じることが想定できるので、購入する投資信託は慎重に選択することが求められます。一方、インデックス運用であれば、基本的にどの投資信託を購入しても同じ指数に連動するものであれば、さほど運用成績に差は生じません。

 

では、どちらが有利なのか。
結論を言えば、高い信用と運用力を持ったファンドを選択し、アクティブ運用することができれば、最も高いリターンを狙うことができるといえます。しかし、アクティブ運用の場合、アナリストやファンドマネージャーの不断の努力により投資すべき銘柄を慎重に選択して組み入れているので、インデックス運用に比べてコストがかかります。

 

しかし、そのコスト差は1%程度とのこと。運用のプロのスキルと貴重な時間を利用するための費用としてはコストメリットがあるのではないでしょうか。特に、私たちのように仕事をしながら投資する場合、個別銘柄についての情報収集に多くの時間を費やすのは無理があります。

 

こうしている今も世界経済は成長しており、この経済成長のシナリオに自分の資産を乗せて増やしていこうというのが長期目線での積立投資であり、投資信託を活用するメリットでもあります。

 

その途中では、リーマンショックやコロナショックのような「100年に1度」と呼ばれる市場の混乱も起こり得るでしょう。株価の暴落といえども、世界経済は長期的に見て成長していくことを考えれば、一時的な小休止に過ぎません。

 

確かな目利きのできるファンドを選ぶことで、長期的に見ても安定したリターンを得ることが可能です。それこそが、ビジネスパーソンにとって最も適した資産形成方法といえるのではないでしょうか。

#144 とりあえず投資信託

多くの人からお金を集めてファンド(運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品)を組むことで、長期の資産形成に必要な要素を持ち合わせており、投資の王道とも呼べるのが「投資信託」です。

 

必要な要素のひとつとして、分散投資があります。投資信託は大勢の投資家から集めた資金で投資を行うため、私たち個人では到底ムリな100億円、1,000億円規模の運用が可能になることが特徴です。

 

これだけの金額があれば、日本の株式市場だけでなく海外の株式にも分散して投資できるようになります。投資信託は個人レベルの分散投資を最大限に効率化し、利益を分配するための仕組みであるといえます。

 

もうひとつの特徴として、小額の資金から誰でも参加できることが大きな特徴です。多くの投資信託は1万円程度から購入することができるため、毎月少しずつ積み立てるなど、無理せず投資を始めることがかのうです。

 

さらに、運用自体はすべてプロにお任せ、銘柄の選定から資産配分比率の調整、売買のタイミング判断等もファンドマネージャーが一手に担ってくれます。本業である仕事を抱えている私たちにとっては、資産運用に関する情報収集や判断を任せられるので、精神的にも非常に楽になります。

 

ひと口に投資信託といっても、さまざまな種類があります。株式を中心に投資する「株式投資信託」、債券に投資する「公社債投資信託」の他、世界中に分散投資するタイプのものまで、選択肢は多様です。

 

このなかでも、公社債投資信託については、わずかでも株式を組み入れてはいけないことになっています。つまり、公社債投資信託以外の投資信託は、株式投資信託といってよいでしょう。海外債権を組み入れて運用する投資信託も投資対象の大半は債券ですが、為替変動リスクがあるため、株式投資信託に分類されています。

 

株式投資信託は、日本の株式・債券だけでなく、世界中の株式・債券等を組み入れて運用するタイプもあります。このタイプの投資信託は、国内だけでなく世界中に分散投資できるため、非常に高いリスクヘッジが期待できます。

 

世界経済の成長に合わせた運用を目的としているため、投資の未経験者がとりあえず毎月1万円から積み立て投資する場合などに向いているといえるでしょう。

#143 株式の割高・割安の判断基準

株価が安くなったから「買いだ」と判断するにしても、何を基準に判断すれば良いのでしょうか。店頭で販売される生鮮食品であれは、特売や見切り品など、大幅に値引きされているものは「お得」と判断できます。

 

株式の場合、株価水準が低いからといって購入すると、さらに値下がりしてしまうこともよくあることなので注意が必要です。私自身も昨年、フィリピンの証券取引所に口座を開設し、コロナ禍でマーケット全体が値下がりしているなかで投資しましたが、回復局面と思われたところにオミクロン株の蔓延やウクライナショックによりさらなる下落局面を迎えてしまい、20~30%のマイナスを経験しています。

 

株価が高いか安いかを判断する際には、明確な基準となる指標が必要です。代表的なものとして、企業収益と株価を比較する方法で、現在の株価を1株あたりの純利益で割って求める数値があります。これをPER(株価収益率)といい、よく参考にされる指数なので覚えておいてください。

 

純利益とは税引後の純粋な企業利益であり、この純利益を発行済み株式数で割ると、1株当たりの純利益が求められます。現在の株価をその値で割ることで、PERが求められ、単位は(倍)と表します。基準としては東証一部上場企業の平均的なPERが何倍なのかを把握しておく必要があります。

 

2022年時点ではPER平均値が20倍を超えている状況にあり、全体的に割高であると判断されますが、この数字よりも低いPERであれば、全体水準と比べて相対的に割安であると判断することができます。

 

もうひとつの指標としては、純資産と株価との比較です。純資産とはその会社が持っている総資産から負債を差し引いた正味の資産のことを指します。これを発行済み株式で数割って求められるのが1株当たりの純資産額です。現在の株価をその値で割ることで求められる数字をPBR(株価純資産倍率)といいます。

 

PBRが1倍を下回る場合、一般的にはその株価は純資産から見て割安であると判断されます。逆に、1倍を大きく上回る会社の株価は、すでにその企業価値を認められ、多く買われている(割高である)と評価できます。

 

現在、東証一部上場企業の平均PBRは1.25倍程度で推移しており、これを下回る会社の株価は相対的に割安と判断できます。さらに割安銘柄に投資するのであれば、PBRが1倍を割っている企業を選択するのもひとつの手法です。現在は評価されていなくても、思わぬ潜在価値のある企業を発掘できるチャンスでもあり、そういった企業に投資することを「バリュー投資」と呼びます。

 

ギャンブル的な視点ではなく、長期的に見て有望な企業の株式を保有し続けるという選択も悪くないでしょう。

#142 株価はなぜ変動するのか

株式市場(マーケット)には、「売り手」と「買い手」が存在しています。売り手が買い手よりも多ければ株価は下落し、買い手が売り手よりも多ければ株価は上昇します。株式数は、その時点では一定であるため、株式そのものの需要と供給のバランスにより、株価が変動するのです。

 

では、その需給関係はどのようにバランスを保ち、どのような要因で変動するのでしょうか。影響を及ぼす要因が2つあります。ひとつは、物価や金利、為替といった外部環境(マクロ環境)、もうひとつは個別企業の業績動向に左右される内部環境(ミクロ環境)が挙げられます。

 

一般的に言われるマクロ環境における影響は以下の通り。

 

◻️物価が上がれば株価が下がる ⇔ 物価が下がれば株価が上がる

◻️金利が上がれば株価が下がる ⇔ 金利が下がれば株価が上がる

◻️円高が進めば株価が下がる  ⇔  円安が進めば株価が上がる

 

株式市場全体の値動きは、こうしたマクロ環境に大きく左右されることがあります。しかし、これらの外部環境によって株式市場全体が下落局面にあっても、個別銘柄で見れば株価が上昇している会社はあります。その理由が個別企業の業績動向、つまりミクロ環境になります。

 

景気が悪いと企業が業績を上げにくくなるのが一般的ですが、状況にマッチングした新製品やサービスを展開することにより、業績を伸ばしている会社もあります。このように強い経営体質を持つ会社は、景気や為替変動などのマクロ環境に大きな影響を受けることなく株価が安定する傾向にあるため、長期的に保有するのに安全な資産クラスであるといえます。

 

だからといって値下がりを起こさないというわけではなく、状況が悪化すればどれだけ強い経営体質をもってしても、マーケット全体の動きに引っ張られて株価は下落します。逆を返せば、そのような状況を逆手に取ることで有望な会社の株式をバーゲン価格で購入する絶好のチャンスと捉えることもできるでしょう。

 

割安と判断して買ったとすれば、その会社の業績やそれを支える強みが変わらない限りは中長期的な視点で保有する。それが個別銘柄の株式投資でリターンを得るための考え方のひとつです。