#141 「株を買う」とは
投資といえば「株を買う」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。そもそも株とは何なのでしょうか。ここでは「株式」は、その会社のオーナーになる権利を小さく分けたものであると定義します。
つまり、ある会社の株式を取得することは、同時にその会社のオーナーとしての権利の一部を取得したのと同じ意味を持ちます。株式を保有する投資家のことを「株主」といいます。株主になることで、会社の経営に関わることができます。
毎年の決算後に開催される株主総会において、そこで検討される議案について賛同、もしくは否認する権利が与えられます。投資している会社の今後の経営方針などに疑問があれば、挙手して自由に発言することも可能です。
また、投資した会社の事業で生じた利益(税引後純利益)の一部を「配当金」=「インカムゲイン」として受け取る権利があります。利益のうち、どれだけを株主に対する配当金に充てているか、配当性向の高い企業が投資先として好まれる傾向もあります。
企業によっては「株主優待」といって、その会社の製品・サービスを無料もしくは格安で利用できる優待券などが付与されます。お得な優待券を得られる銘柄を紹介するサイトなどもあり、株主優待を期待して投資をする人も増えています。
しかし、何といっても株式投資の最大の醍醐味は、企業の成長に伴って持っている株価が上昇する「値上がり益」=「キャピタルゲイン」です。株式そのものの価値が上がれば、買った時の金額と値上がりした現在価格の差額が投資家の利益になります。売却しなければ「含み益」の状態で保持することも可能です。
今度は、会社の側から株式を見てみます。会社にとっての株式とは、資金調達の手段です。多くの会社が設立当初には特定の投資家、経営者の縁故関係にある人や、未上場企業の株式に投資するベンチャーキャピタルなどの金融機関に投資を募ります。
事業規模が拡大していくにつれて、より多くの資金が必要になるため、会社はより多くの投資家から資金を調達するために株式の上場を検討します。上場とは、株式市場を通じてその会社の株式を不特定多数の投資家に購入(保有)してもらう資金調達の手段です。
株式で調達したお金は銀行からの借り入れや社債の発行による資金調達とは異なり、その会社の自己資金となるため、株式を購入した投資家に返済する必要がありません。会社にとって非常に都合の良いお金とも言えます。
ただし、株式を購入した投資家に対して、経営に参画する権利や、利益の一部を配当として受け取る権利を与える必要があります。しかし、必ずしも返済される保証がないにもかかわらず、なぜ投資家は多額のお金を払って株式を購入するのでしょうか。
それは、「株式市場」=「株式の流通市場」(マーケット)があるからです。投資した会社が自ら投資家に対してお金を返済する義務はありませんが、ある日どうしても現金が必要になり、その会社の株式を売りたいと思った投資家は、株式市場を通じて売りに出し、買い手がつけば簡単に現金化することが可能です。
市場があることで預金と同じように流動性を高く保つことができ、放っておいても一向に増えない預金に対して、前述したように配当や株価の値上がりが期待できます。もちろん、株価は変動リスクがあるため購入する国や銘柄、売買のタイミングは見極めなければいけません。
株式とは、投資家にとっては資産運用の手段であり、会社にとっては資金調達の手段です。投資マネーが会社の成長をバックアップし、会社が事業の拡大で得た利益の一部を投資家へ還元する。
会社の拡大は新たなサービスや雇用を創出し、その国の経済全体を活性化することになります。このように正のフィードバックループを形成するためには、日本政府が打ち出す「一億総株主社会」が何を意図しているのか、その正しい解釈、つまり、日本人の金融リテラシーの向上が不可欠です。