#141 「株を買う」とは

投資といえば「株を買う」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。そもそも株とは何なのでしょうか。ここでは「株式」は、その会社のオーナーになる権利を小さく分けたものであると定義します。

 

つまり、ある会社の株式を取得することは、同時にその会社のオーナーとしての権利の一部を取得したのと同じ意味を持ちます。株式を保有する投資家のことを「株主」といいます。株主になることで、会社の経営に関わることができます。

 

毎年の決算後に開催される株主総会において、そこで検討される議案について賛同、もしくは否認する権利が与えられます。投資している会社の今後の経営方針などに疑問があれば、挙手して自由に発言することも可能です。

 

また、投資した会社の事業で生じた利益(税引後純利益)の一部を「配当金」=「インカムゲイン」として受け取る権利があります。利益のうち、どれだけを株主に対する配当金に充てているか、配当性向の高い企業が投資先として好まれる傾向もあります。

 

企業によっては「株主優待」といって、その会社の製品・サービスを無料もしくは格安で利用できる優待券などが付与されます。お得な優待券を得られる銘柄を紹介するサイトなどもあり、株主優待を期待して投資をする人も増えています。

 

しかし、何といっても株式投資の最大の醍醐味は、企業の成長に伴って持っている株価が上昇する「値上がり益」=「キャピタルゲイン」です。株式そのものの価値が上がれば、買った時の金額と値上がりした現在価格の差額が投資家の利益になります。売却しなければ「含み益」の状態で保持することも可能です。

 

今度は、会社の側から株式を見てみます。会社にとっての株式とは、資金調達の手段です。多くの会社が設立当初には特定の投資家、経営者の縁故関係にある人や、未上場企業の株式に投資するベンチャーキャピタルなどの金融機関に投資を募ります。

 

事業規模が拡大していくにつれて、より多くの資金が必要になるため、会社はより多くの投資家から資金を調達するために株式の上場を検討します。上場とは、株式市場を通じてその会社の株式を不特定多数の投資家に購入(保有)してもらう資金調達の手段です。

 

株式で調達したお金は銀行からの借り入れや社債の発行による資金調達とは異なり、その会社の自己資金となるため、株式を購入した投資家に返済する必要がありません。会社にとって非常に都合の良いお金とも言えます。

 

ただし、株式を購入した投資家に対して、経営に参画する権利や、利益の一部を配当として受け取る権利を与える必要があります。しかし、必ずしも返済される保証がないにもかかわらず、なぜ投資家は多額のお金を払って株式を購入するのでしょうか。

 

それは、「株式市場」=「株式の流通市場」(マーケット)があるからです。投資した会社が自ら投資家に対してお金を返済する義務はありませんが、ある日どうしても現金が必要になり、その会社の株式を売りたいと思った投資家は、株式市場を通じて売りに出し、買い手がつけば簡単に現金化することが可能です。

 

市場があることで預金と同じように流動性を高く保つことができ、放っておいても一向に増えない預金に対して、前述したように配当や株価の値上がりが期待できます。もちろん、株価は変動リスクがあるため購入する国や銘柄、売買のタイミングは見極めなければいけません。

 

株式とは、投資家にとっては資産運用の手段であり、会社にとっては資金調達の手段です。投資マネーが会社の成長をバックアップし、会社が事業の拡大で得た利益の一部を投資家へ還元する。

 

会社の拡大は新たなサービスや雇用を創出し、その国の経済全体を活性化することになります。このように正のフィードバックループを形成するためには、日本政府が打ち出す「一億総株主社会」が何を意図しているのか、その正しい解釈、つまり、日本人の金融リテラシーの向上が不可欠です。

#Column アノニマス × ビットコイン

Anonymous:アノニマスは日本語で「匿名」を意味します。SNSの掲示板等で「名無しさん」と表示されるのと同じ意味を持ちます。

 

ロシアのウクライナ侵攻が継続するなか、インターネット上でロシアへ宣戦布告した組織が「Anonymous(アノニマス)」です。アノニマスは、「アクティビズム」と「ハック」を掛け合わせた造語である「ハクティビズム」という社会正義を、ハッキングなどを通じて実現する世界観を背景にオペレーションを実行しています。

 

アノニマスの思想は、「我々はアノニマス。我々はレギオン。許さない。忘れない。待っていろ。」という標語にも示されるとおり、世界の片隅で自由を侵害する出来事が起きたとき、DDoS攻撃などの手法を使って、ターゲットにサイバー攻撃を仕掛けています。

 

アノニマスが関与する出来事はウクライナ侵攻のような大規模なものから、カナダの15歳の少女がネットいじめにより自殺したことを受け、いじめの主犯格とされる男の実名と住所をネット上に公開するなど、そのオペレーションは多岐に渡ります。

 

アノニマスのメンバーは世界中に散らばっており、だれでも自分をアノニマスと名乗ることができます。特定の個人がリーダーとして存在して指揮をとるのではなく、各個人がアノニマスとしての社会正義を行使しているのです。リーダーがいないということは、アノニマスを組織として摘発できないことを意味しており、いわゆる自律分散型組織(DAO)であるといえます。

 

アノニマスのロシアに対する宣戦布告はTwitterで投稿されました。内容は以下の通り。


「世界中のハッカーたちよ、#Anonymousの名のもとにロシアを標的にせよ。我々はロシアを許さない、忘れないということを彼らに知らしめるのだ。アノニマスはファシストたちを手中に収めている。いついかなる時も、だ。愚か者が他の愚か者を暴力に導き、世界中がカオスになったとき、私たちは無力だと感じるかもしれない。しかし、私たちは決して無力ではない。暗闇の中のたったひとつの理性の声でさえ、多くの人にとっての光の道しるべとなり得るのだ。声を上げろ。耳を傾けろ。君のすることすべてにおいて、正しくありなさい。」

 

この宣戦布告以降、アノニマスはロシア政府に対して大規模なサイバー攻撃を仕掛けています。特筆すべきオペレーションのひとつが、降伏したロシア軍戦車の乗員に対して約600万円相当のビットコインを支払うというもの。

 

戦車をビットコインと交換したい兵士たちは、アノニマスがそれを認識できるように、白旗を振ってパスワード「million」を提示することを条件としています。アノニマスは活動資金としてビットコインを大量に保有しているとされており、対ロシアのオペレーションにあたっても、そのビットコインを活用しています。

 

ウクライナ政府はビットコインでの寄付を受け付けており、検閲を受けない国際マネーであるビットコインが存在感を放っているといいます。日常生活では、そのスケーラビリティやボラティリティの問題もあり普及しているとは言えませんが、大規模な資金の移動を「中立」に行うことができるビットコインのポテンシャルを国際社会が再認識する切っ掛けとなり得るのではないでしょうか。

 

アノニマスの掲げる社会正義を善とみなすか、悪とみなすかは意見の分かれるところかもしれませんが、個人的にはアノニマスの行動が新しい時代の正義のカタチのひとつとして、否定も抑止もできなくなるのではないかと感じます。

#140 金融政策とは

景気とマーケットの動きは、政府による金融政策によってある程度コントロールされています。その金融政策を司るのが中央銀行、日本でいえば日本銀行(日銀)になります。その役割は大きくふたつに分かれます。

 

ひとつ目の役割は、「銀行の銀行」としての機能です。メガバンクや地方銀行などの民間銀行は、私たちの預金を通じて資金を集め、それを企業や個人に融資することにより、利子を受け取っています。そして、銀行間の資金の過不足を調整するため、それぞれの銀行に資金を融通するのが日銀の役割になります。

 

ふたつ目の役割は、「物価の番人」です。景気が良くなると物価が上昇することは先述した通りですが、過度な物価上昇はいたずらに「お金の価値」を低下させ、1,000円で買えていたものがいつのまにか2,000円になっていたというような状況を生み出してしまいます。

 

一般的には物価上昇に伴って賃金も上昇する傾向にありますが、賃金上昇よりも物価の上昇が大きくなると、私たちの生活はどんどん厳しくなっていきます。そのとき、日銀はインフレを抑えるための金融政策を実行します。これが「金融引締め政策」と呼ばれるものです。

 

簡単に言うと、市場に出回るお金の量を減らし、カネ余りの状態を解消することです。そのためには金利を引き上げることで企業や個人がお金を借りにくい状態をつくることが必要になるのです。設備投資や個人消費が抑制されれば徐々に物価は下落し、インフレを解消できるという考えです。

 

逆に景気が悪く、物価が下落している局面(デフレ)では、日銀は「金融緩和政策」を実行し、金利を引き下げることで市場に出回るお金の量を増やすことでデフレからの脱却と景気の向上を目指します。「量的金融緩和」という言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。これは、一般的な金融緩和とは違い、ダイレクトに市場に出回るお金の量を増やす(造幣局で無尽蔵にお金を刷りまくる)という政策です。

 

金利をほぼゼロにまで引き下げたのに景気の回復が見込めない、あるいはデフレから脱却できない状況のなか、安倍前首相が諸刃の剣として打ち出したのがこの量的金融緩和政策です。コロナ禍以前の状況でいえば株価は上昇し、不動産価格も回復してきました。

 

現在、外国為替市場では円安が進行中です。日本の基幹産業である自動車や電機産業においては輸出企業が多いため、円安下においてはグローバル市場での価格競争力は増していきます。輸出企業の好調で日本経済全体をけん引し、少しずつでも景気回復の兆しが見て取れるようになることを願いたいですね。

#139 でも損はしたくない②

好景気局面では株価は上昇、債券価格は下落しますが長期金利は上昇します。不景気局面では株価は下落、債券価格は上昇しますが長期金利は下落します。

 

景気が底を打っているとき、企業の業績は低迷しており、結果として株価も上がりにくい状況が続くため、中央銀行が金融緩和を行い、景気を刺激しようとするため債券が買われ、長期金利が低下します。

 

そうなると、徐々に投資対象に変化が起き、より高いリターンを求めるため株や外国債、現在では暗号資産などのリスク資産にお金が集まり始めるのです。その流れが継続することで景気は段々と回復局面を迎え、やがて景気回復が顕著になると、株価は上昇し、長期金利も上昇していきます。

 

一方、景気が過熱しすぎると、インフレ(物価上昇)が進む恐れが出てきます。経済成長に伴う緩やかな物価上昇は問題ありませんが、急速なインフレはさまざまな問題を引き起こします。物価上昇が続くと、株式や不動産等のインフレによって値上がりする資産を持たない人は、お金を使っていなくても実質的な預貯金(お金の価値)が減ってしまうことになるのです。

 

こういったインフレの影響を避けるため、景気拡大がピークを迎える局面では、日銀が金融引締めを行い、金利水準が高くなります。その結果、お金は債券等の金融資産に流れを変えていくため、債券価格は低下し、長期金利は上昇します。

 

お金を借りるコスト(金利)が上がるため企業は設備投資を控え、個人の消費も落ち込んでいきます。すると徐々に景気は後退局面へ移行することとなり、それに伴い企業業績は低迷し、株価は下落します。日本の景気拡大に対する期待が持てなくなれば海外の投資家も日本への投資を抑制し、円が売られるため、今後も円安の進行が考えられます。

 

以上が一般的な景気循環のサイクルです。景気拡大局面では株式やリート(不動産)が、後退局面では債権が堅調となることが期待されます。日本だけでなく海外にも目を向けた時、どの国がどのような状況で、今後どのような成長を辿っていくのかを予想することも可能です。

 

正しく理解し、正しく判断・選択することで損をする確率を限りなく低減することが可能です。それでも難しくて判断ができないという方は、正しいとは言い切れないまでも、間違った選択をする可能性の少ない人(勉強して投資を実践し、実績を残している人)や企業(資産運用ビジネス)に相談するのも良いかもしれません。

#138 でも損はしたくない①

投資するうえで欠かせないのが、リスクとリターンを正しく理解し、損をする可能性を限りなくゼロに近付けることです。人生100年時代、少しでも多く晩年の資産を形成しておくために、欲張って大きなリスクを負わなくても、適正なリターンを長期間にわたって享受することを考える必要があります。

 

投資のタイミングを計るうえでも重要なのが「景気」が良いとか悪いとか、経済状況の顔色を伺いながら、絶好の機会を見逃さないようにアンテナを張っておくことが必要になります。では、景気とはどういう状況を指しているのか、簡単に考えてみましょう。

 

◻️景気が良い

・個人が活発に消費を行っている
・企業が設備投資や事業の拡大に積極的である
・「金回り」が良いと感じている人が多い
・賃金の上昇と緩やかな物価上昇(インフレ)が見込まれる
・失業率が低下し、雇用環境が良くなっている

 

◻️景気が悪い

・財布の紐が締まり、消費が減少している
・企業の設備投資意欲が落ち、内部留保が高まる
・「金回り」が悪いと感じる人が多い
・経済活動が低迷し、物価が下落(デフレ)傾向になる
・完全失業率の上昇など、雇用環境が悪化する

 

好景気と不景気は、一定のサイクルをもって循環しており、好景気のあとは景気後退局面に入り、やがて本格的な不況を迎えます。期間の長短はありますが、不況もいつまでも続くものではなく、景気拡大局面に入り、再び好景気を迎えます。

 

では、景気の変動はマーケット(株式市場・債券・為替などの金融市場)にどのような影響を及ぼすのか。資産運用はこれらのマーケットの値動きによって損益が増減しています。つまり、好景気と不景気によってマーケットがどのように反応するのかをきちんと把握しておいた方が良いでしょう。

 

次回は、好景気と不景気によるマーケットの動向について見ていきたいと思います。

#137 選択の自由

少子超高齢化・超低金利・ハイパーインフレの懸念など、現在は個人が資産形成・資産運用をせざるを得ない状況になっており、国が国民に対して投資を促すNISAやiDeCo、高等学校での金融教育の開始など、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。

 

仕事上、新入社員に対して入社研修などを担当することがあり、金銭管理の面から「投資」についての関心やイメージを聞いてみたりするのですが、いまだに20代の若年層でさえ投資についてネガティブなイメージをもっている方が多く、計画的に貯金をしていれば問題ないと思い込んでいます。

 

やはり日本人は、親からも、学校からも、身近な人からも投資に関する教育を受ける機会が少なく、正しく学び、理解することが難しい環境にあるようです。そもそも、銀行にお金を預けている(貸している)こと自体が投資であり、「銀行に預けていれば大丈夫」といった安心感と引き換えに、ゼロに等しいリターンを受け取っていることにも気付けないのが現状です。

 

銀行は「融資」、つまり私たちから借りたお金を企業や個人に貸すことを通じて、またはそのお金を使って資産運用することで世の中に成長マネーを供給しています。そこにかかる必要経費は手数料で徴収しています。

 

ひと昔前の銀行は融資先に対して「経営指南約」的な役割を担っていましたが、現在は銀行が長期的な利益を見込んで一企業とパートナー的な関係を継続することが少なくなっています。どちらかといえば、預貸ビジネスを中心とした国債の売買・リート(不動産関連)投資・金融商品販売による手数料徴収に特化したビジネスモデルに転換しています。

 

そこで現在、銀行に代わって企業に対する統制、経営指南役的なポジションに座っているのが「資産運用会社」になります。一定の株式を保有している資産運用会社が、株主としての立場を有効活用し、投資先の企業に対して今後の成長戦略について提言していく「もの言う株主」として経営に対しての影響力を発揮するものです。

 

高い成長が見込まれる企業に対して投資し、株主として経営に関する提言やアドバイスを行うことにより、企業価値の上昇に繋げることができれば、結果的にファンドとして運用成績の向上と信頼の獲得に直結します。このような互いにとってプラスとなるフィードバックループが期待されます。

 

現在の資産運用会社は、かつての銀行のような「お金の流れ」をつくるリーダー的な役割を担うようになっています。資産運用ビジネスが、金融・企業経営に及ぼす影響力は今後も高まっていくはずで、投資して運用しようと考える私たち個人にとっては、投資信託をはじめとする金融商品で自分自身の資産を形成していくことが当たり前になっていくでしょう。

 

銀行に預金するだけの資産管理は過去のものとなり、個人が小額から国内外へ向けた投資に参加し、企業の利益を分配・享受する。5~10年後には投資していないことが不思議に思えるような価値観の転換点に私たちは生きているのです。

 

◻️資産を形成するためにできること

①収入を増やす
②支出を減らす
③お金に働いてもらう

 

あとはどれを選択し、やるかやらないか、いずれにしても行動あるのみです。それが、ひとりひとりの豊かな生活に繋がっていくことを確信に変えていきましょう。

#136 インフレ時代の生き残り戦略

これからの日本において、資産を形成していくためにはどのような対策を講じるべきなのでしょうか。答えは二択、「投資すること」または「起業すること」です。私は「投資」を選択しました。

 

政府が掲げる年間2%のインフレが今後の10年間続いたと仮定した場合、現在100万円の製品は10年後、約122万円で販売されることになります。

 

それに対して、ほぼ0%金利の銀行預金に100万円を保有していた場合、その額面はほぼ変化がありません。つまり、現在100万円で買える製品は、10年後には買えないということです。

 

しかし、100万円を年間2%のリターンで投資すればどうでしょうか。10年後の保有資産は122万円となり、先ほどの製品を購入することができます。とはいえ、投資というと多くの人は「損をする」というネガティブなイメージが先行してしまい、行動に移せないままでいるのだと思います。

 

確かに、株式投資でいえば特定の1銘柄にだけ投資すれば、損益はその銘柄の株価だけに左右されるため、損失を被る可能性が高まります。しかし、それを5~10銘柄に分けて投資すればどうでしょう。あるいは、株式だけでなく、国内外の債券や投資信託、暗号資産等に分散したらどうでしょうか。

 

値動きやボラティリティの異なる性質を持つものに分散しておけば、ひとつの資産が値下がりしても、他の資産の値上がりでカバーできる可能性が出てきます。自分自身が求めるリターンに応じてポートフォリオを構成すれば、ある程度リスクをコントロールすることが可能になります。

 

ひとくちに投資といっても、さまざまな種類があります。一般的にリスクが高いといわれる資産を順番に挙げていくと、事業投資・暗号資産・FX・株式・不動産・投資信託・社債・金(ゴールド)・預貯金となります。リスクが高いほどリターンが高く、リスクが低いほどリターンが低くなることはお分かりいただけると思います。

 

複数の資産クラスにお金を分けて投資することを「分散投資」といい、定石ともいえる手法です。私自身も、投資信託40%、フィリピン株20%、暗号資産20%、P2Pトレード20%といった風に、4つの資産でポートフォリオを構成しています。ここに、「長期投資」という概念を加えると、損失を出す可能性をさらに低減することが可能です。

 

日本人の個人金融資産のうち、株式等のリスク資産の保有率は20%程度、ユーロ圏では30%、アメリカでは50%以上にのぼります。欧米では学校教育の段階で、自分の資産をどう管理し、増やしていくかを学ぶ機会に恵まれているからです。

 

そのため、若いうちから計画的な投資によって資産を築いている人も少なくありません。日本にいたとしても、正しく理解し、早いうちから投資を始めることで定年を迎えるまでに十分な資産を築くことが可能です。

 

まだ間に合います。1日でも早くその一歩を踏み出しましょう。

#135 目減りする預貯金

通帳に記載されている額面は同じでも、年々その価値が目減りしていることにお気付きの方は多いと思います。私たちの親世代は銀行や郵便局に預けておくだけで年間6%以上のリターンを得られたことから、預貯金の大切さを説かれるのでしょう。

 

実際に、銀行等にお金を預けることは、金融機関にお金を貸していることであり、当時は「預金=投資」として十分に機能を果たしていました。現在、金融商品で資産を運用することの動機・メリットは効率よくお金を増やすことですが、最も重要なのはインフレ(物価上昇)に備えるということなのです。

 

政府が掲げている年間の物価上昇率は2%なのに対し、預金の金利はほぼ0%、賃金上昇率が2%未満だったらどうなるでしょうか。私たちの立場から見ると、物価の上昇率が年間2%ということは、その分、お金の価値が相対的に下がっていることを意味しています。

 

賃金の上昇がそれに追いついていなければ、どれだけ切り詰めて預貯金を維持したとしても毎年数%ずつ資産が目減りしていくことになります。同じ100万円でも買えるものがどんどん少なくなっていくということです。

 

結果的に資産価値が目減りし続けるため、これまでと同様に預貯金でお金を管理するだけでは、将来の資産を築いていくことは不可能でしょう。なぜなら資本主義経済のセオリーでは、物価が上昇する局面ではそれに伴って金利や賃金も上昇します。これからはそのセオリーが通用しないと想定されるからです。

 

物価が上昇すれば、企業の売上・利益、個人の所得は表面的に増えますが、法人税や所得税の額も増えます。一般的にはそこに金利の上昇が伴うことでバランスを保つのですが、日本政府は莫大な借金を抱えているため、ゼロに近い低金利を継続することにより債務の拡大を抑えることを優先するでしょう。

 

そこに増税まで課せられた日には・・・。年々、預貯金におけるお金の価値は目減りしていること、インフレ率を上回る賃金や金利の上昇が見込めないこと、増税等で必要な支出も増加傾向にあることなど、生活費のコントロールだけでは資産形成しづらい時代に私たちは生きていることを意識しておきましょう。

#134 資産形成を考える

今更ですが、皆さんは「投資」という言葉を聞いてどのような印象を持つでしょうか。関心はあるものの、なんだか「あやしい」「損をする」「ギャンブルみたいなものだ」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

 

「投資」は「貯金」と違って値動きがあるため、利益を生むことがある一方、損をしてしまう場合もあり、そのリスクは自分ではどうしようもないところにネガティブなイメージが生まれてしまうのかもしれません。

 

特に日本人は欧米に比べて若いうちから投資に関することを学ぶ機会がなく、身近に投資をしている人が少なく、慣れ親しむ機会も少ないことがマイナスイメージの原因になっているのかもしれません。個人的には、それは全くの誤解であり、間違った解釈であると考えています。

 

できるだけ早いうちに経済の仕組みやお金の流れに関心を持ち、はじめの一歩を踏み出すことが重要だと感じています。

 

歯止めのかからない少子超高齢化社会のなか、すでに問題視されている年金問題、ゼロに近い低金利状態でのインフレ傾向、30年間ほとんど変わっていない所得水準など、数々の問題があるため、自分自身で将来の資産を形成していくことは必要不可欠です。

 

若い人たちに限らず、人生100年時代を生きる私たちは、しっかりと「投資」に向き合うことが大切であり、「貯金さえしていれば大丈夫」という幻想から目を覚まし、”お金に働いてもらう”感覚を身に付けておかなければいけません。

 

私たちが投資したお金は、資本主義社会における企業の持続的な成長、経済の発展につながり、そのフィードバックループが形成されることで社会に役立っているのです。欧米では若いうちから投資に関する教育や制度も充実していることから、投資をしていないことの方が違和感があるようです。

 

ようやく日本でも2022年4月から高等学校以上の家庭科の授業で、「投資」に関する教育が導入されることは以前にも触れました。国内でもNISAやiDeCoなど将来の資産形成に向けたさまざまな金融商品がありますが、選択肢が多くてどれを始めればよいのか迷っている方も多いかもしれません。

 

「投資」で資産形成することはすでに「常識」の時代が来ていると思います。これまでの投稿が、少しでも迷っている皆さんの後押しになればと願っています。

#133 インダストリー4.0_スマートファクトリー

2011年に初めて提唱された「インダストリー4.0」の目的は製造業の自動化、つまり機器やロボットをコンピュータ制御することにより工場内において人手を必要としない「スマートファクトリー」を実現することです。

 

サプライチェーンをデジタル化し、コスト削減・予防保全・付加価値を生み出す生産方式の最適化による生産性の向上を目指します。

 

スマートファクトリーの実現において重要なのが、IoTの導入による情報通信環境の整備です。工場内のラインや設備、工場間をインターネットで接続することで、無人で無駄のない生産ラインを実現します。

 

そのためには、IoTを用いたデータ収集が重要です。センサーなどからインプットしたデータは、ビッグデータとして記録され続けます。

 

ビッグデータはそのままではただの大容量データにすぎませんが、これをAIで分析し、有用なデータとして活用できるようになります。これまでは人がパフォーマンスの評価とフィードバック、業務改善を行っていたものが、これらの技術によって全て自動化されるのです。

 

スマートファクトリーを実現することで、製造業界は様々な恩恵を受けられるようになります。

 

◻️柔軟な計画変更

生産ラインの停止や生産計画の変更には事前の調整が必要ですが、スマートファクトリーの生産ラインはネットワークで一元管理されるため、意思決定が速やかに実行されます。

 

多くの工程があっても一斉にコントロールできるようになるため、速やかな生産計画を実現できます。

 

◻️データに基づいた人員配置

スマート工場では生産ラインの稼働状況や人員の配置、生産量やスピードなどをIoTの力でビッグデータとして記録できます。

 

蓄積したデータを分析し、必要なラインに必要なだけの人員を配置したり、電力などの使用に無駄がないかなど、さまざまなリソースについて最も効率よく稼働させるための最適化が可能となります。

 

◻️技術や知識の数値化

熟練の作業員やエンジニアの存在は頼りになりますが、個人のスキルレベルとパフォーマンスは客観的には把握し難いものです。

 

熟練技術者のスキルがデータによって可視化されれば、技術の継承も容易になり、ロボットのパフォーマンス改善にも応用されるため、技術者不足や熟練者不足の解消につながります。

 

◻️異常検知と予防保全

全ての生産ラインやシステムがオンラインでつながっているため、異常が発生した場合に速やかに検知し、被害の拡大を最小限に抑えることができます。

 

センサーのデータを解析し、AIに学習させることで人間では気付かないレベルで予防保全に取り組めるため、重大インシデントの発生を未然に防ぐことができます。

  

スマートファクトリーは少子超高齢化が進むに日本において、製造業における重要なソリューションのひとつなのです。