#62 ファイルコインのマイニング

マイニングの要件はそれぞれの暗号通貨によって異なりますが、Filecoinのマイニングはビットコインのマイニングとは一線を画します。

 

ビットコインのマイニングは、マイニング専用機器で膨大な検算を行い、多くの電力を消費しながら取引を検証・承認し、その報酬として新規発行のコインを得るものです。専用のデバイスを冷却しながら管理する必要があるため、環境負荷が高いことが問題視されています。

 

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「仮想通貨は様々な面で良いアイデアであり、将来性があると信じているが、環境に大きな負担をかけるわけにはいかない」として、同社のビットコイン決済を中止したことも話題になりました。

 

一方、Filecoinのマイニングは、IPFSのエコシステムのストレージ(サーバ容量)を確保するため、世界中に分散しているノードがそこにデータを保存・管理できるだけの容量を提供することにより、報酬として新規発行のコインを得ることができるといった仕組みです。

 

増加するデータを適切に確保するためのストレージを提供することこそが、Filecoinのマイニングになります。

 

ビットコインと違い、高い演算能力も、それに必要な電力消費も不要ですが、IPFSを構成するひとりとして、常にデータを読み書き可能にするための環境を維持管理することが重要になります。当然、専用デバイスによる管理です。

 

個人でマイニングすることも可能ですが、相応の知識とノウハウが必要になるため、マイニング企業に投資することで誰でも気軽に参加することが可能です。

 

ファイルコインに投資することは、IPFSが牽引する次世代ネットワークインフラ構築の一躍を担うことになるでしょう。

#61 ファイルコインの可能性②

これまで暗号通貨は投機対象として扱われることが多く、儲けるために購入するモノというイメージが強いものでした。今後は、暗号通貨やDapps(分散型アプリケーション)を利用した方が楽だし、便利だし、安全だからという理由で購入される実需要のボリュームが増して行くと感じています。

 

なぜなら、ファイルコインをはじめとするDapps上で流通する有用性のあるコインが続々と登場した事によって、Dappsで実現できるサービスが多種多様化しており、飛躍的に進化スピードが上がっていくと予測されているからです。

 

例えば、イーサリアムベースで動作するアプリのデータをファイルコインネットワークを活用して保存したり、チェーンリンク(ブロックチェーンネットワークと外部システムを繋ぐミドルウェア)を使って生活に必要な様々な情報をブロックチェーンに折り込んだりといった応用が可能となり、まさに分散型アプリ時代の到来を予見させます。

 

ファイルコインの発行枚数は20億枚と限られています。それに対し、時価総額はストレージネットワークの容量と、指数関数的に増加するデータ量に比例して拡大していくことが考えられます。

 

ストレージ容量・データ量・時価総額がアクティブユーザーの増加に伴い拡大し続けるのに対して発行枚数が一定であるとすれば、1FILの価格はどのように推移していくでしょうか。

 

全てに共通することですが、限られた数量のものを万人が「欲しい」と感じ始めたとき、その潜在的な価値はジワジワと上昇し、ある日を境に一気に膨れ上がる可能性を秘めているのです。

#60 ファイルコインの可能性①

ナスダック(NASDAQ)は暗号通貨が市場でも重要な資産(価値)となる可能性に言及し、暗号通貨をポートフォリオの10%~15%に割り当てることでリターンが高まると予測しました。

 

その理由としてFilecoinが史上最大級の282億円に上る資金調達(ICO)に成功し、スタンフォード大学をはじめ、錚々(そうそう)たる顔ぶれの投資家がサポートするビッグプロジェクトであることをあげ、「私たちは強力な事業計画に裏打ちされたコインに投資するべき」としています。

 

Filecoinは2020年10月に本格稼働を始めましたが、日本の取引所ではまだ取り扱いがないので、あまり聞き慣れないと思います。

 

世界的に見れば多くの取引所で活発に取引されており、喫緊の課題となるデータ保存方法の懸念に対する膨大なストレージ容量の確保と需要の拡大から、ポストビットコインの大本命として注目度が高まっているのです。

 

Web3.0がネットワークスタンダードになれば、ブロックチェーンと相性の良い分散型ストレージの有用性は飛躍的に高まります。

 

例えば、決済を含めあらゆる取引が仲介者を必要とせず、かつ非常に高い信頼性で利用可能になったとき、ビットコイン・イーサリアム・ファイルコイン等の暗号通貨は、投機対象としての需要に加えて「簡単・安心・便利だから使う」という実需要によって、その存在を支えられるプラットフォームへと移り変わっていくでしょう。

 

まずはファイルコインが作り出す分散型ストレージの実需要の拡大、それを補えるだけのストレージ容量の確保と安定供給が今後の成長を左右すると予想されています。

#59 HTTPの問題点

まず、サーバやクラウドに保存された私たちのデータに関する権限はそのサーバの所有者(ストレージを提供する企業等)に委ねられています。

 

この所有者はユーザーからのアクセスに対して、利用料や手数料なども自由に設定ができ、利用者の個人情報を収集することも可能です。私たちはそのサービスを利用するために、疑いなく所有者に対して個人情報を自ら提供しています。

 

また、アップされた情報の検閲や削除、アクセス制限などが可能なため、ネット上の情報の精度や信頼性が担保できない構造になっています。情報を改ざんしたり、フェイクニュースをアップすることが容易にできるうえ、利用者側からすればその情報が正しいのか、フェイクなのか、出処も把握できません。

 

その点が顕在化しているHTTPのネガティブな側面であり、これからの時代に合っていないと指摘される問題点のひとつです。

 

また、この中央集権型の通信規格において、サーバの維持管理責任がサーバ所有者に委ねられている点があげられます。そのサーバに不具合が発生し、これまで蓄積してきたデータが消えてしまうリスクや、ハッキングされてデータが流出するといったリスクを常に抱えており、企業側に致命的なダメージを与える可能性もあります。

 

それらのリスク管理にかかる費用や、保有するデータの増加に対応するための設備投資など、結果としてこれらの維持管理コストは今後も増加の一途を辿っていきます。

 

このように、世界のデータ量が加速度的に増加しているいま、中央集権型のHTTPは利用者だけでなく、サーバ所有者にとっても行き詰まりとなる可能性が指摘されているのです。

#58 IPFS×Filecoin(ファイルコイン)

前週から取り上げている次世代ネットワークのデータ保存方法の在り方について、もう少し掘り下げていきたいと思います。

 

「IPFS」は分散型ストレージの構築を目的とするWeb3.0のインフラになります。AWS(Amazon Web Service)やGCP(Google Cloud Platform)のような中央集権型のサーバ管理ではなく、世界中の遊休ストレージ(私たちが利用しているスマホやPC等の空き容量)を活用し、ネットワーク上でデータを分散して保存できる巨大なプラットフォームを構築しようとする壮大なプロジェクトです。

 

このプロジェクトの始まりは2017年8月に遡りますが、2020年10月の本格始動を皮切りにIPFS・Filecoinを活用した様々なサービスが開発されており、新時代のインフラへの投資として注目を集めています。

 

現在のインターネットはHTTP(Hypertext Transfer Protocol)と呼ばれる通信規格が使われています。これはロケーション指向型と呼ばれるもので、中央管理者により特定のサーバに格納されているデータを取り出すために、そのURL(インターネット上の住所みたいなもの)を指定してデータを取得する方法です。

 

それに対し、IPFS(Inter Planetary File System)は、この中央集権型サーバへの依存から脱却し、GAFA(グーグル,アマゾン,フェイスブック,アップル)などの大手IT企業だけでなく、個々のユーザーに最適化されたプラットフォームを提供するという思想のもと、2014年にアメリカのProtocol Labs社によって開発された新しい通信規格だったのです。

 

特定のサーバを介することなく、コンテンツの固有値(ハッシュ)を指定することでデータを取得する方法を採用しており、これをコンテンツ指向型と呼びます。

 

世界中に分散している膨大なストレージを利用し、より速く、より安全に、また改ざんやフェイクに対して耐性を持つという特徴を活かし、問題視されているデータの爆発的増加時代の解決策のひとつとして注目を集めているのです。

 

これはブロックチェーン技術を活用した新たな通信規格IPFSとFilecoinのマッチングにより、地球規模のネットワーク構築とストレージ(データ保管場所)の確保、全く新しいネットワークインフラを実現しようとする人類のアップデートとも呼べる取り組みなのかも知れません。

#57 IPFSの世界を拡大させるFilecoin

データの保管方法がIPFS技術によって効率化されるとしても、それだけでデータ容量の爆発的な増加という社会問題が解決する訳ではありません。

 

そこで、Protocol Labs社がその技術とブロックチェーン技術を掛け合わせることで問題解決の為に立ち上げたのがFilecoinと呼ばれる一大プロジェクトなのです。

 

Filecoinは、膨張を続ける世界中のデータを適切に保管するために最大規模のIPFSネットワークを構築することをミッションとして始まりました。

 

しかし、IPFSの仕組みそのものだけでは、それを広げるためのインセンティブがないためアクティブユーザーが爆発的に広まることは期待できません。

 

そこで、Filecoinではデータ保管場所(ストレージ)を提供する人に対して暗号資産のFIL(通貨単位)というインセンティブを与えることで、自律的にデータ保管ネットワークが拡大していく仕組みを作り上げたのです。

 

FILは他の暗号資産と大きく異なっており、データ保管という実利用が伴っていることから、単に期待感だけで価格が変動する多くの暗号資産とは根本的に異なっています。

 

Filecoinネットワークは2020年10月15日にサービスを開始し、ネットワークに提供されたデータ保管のための容量は 立ち上げから1ヶ月を待たずに757.23 PiB に達しました。これは私たちにも馴染みのある容量単位のギガに換算すると、7億6千万 GiB にのぼります。

 

Filecoinが際立っているのは容量規模だけでなく、暗号資産としてのFILは稼働開始直後から50以上の取引所で取扱いが始まっており、それだけでも期待の大きさが伺えます。

 

一般的に、立ち上げ間もないプラットフォームがいきなり万人に受け入れられ、爆発的に使われることはありません。これはFilecoinも同様です。

 

これから先、IPFSネットワークの需要拡大により、様々なサービスに採用されていくことがFilecoin成功の大きなカギを握っています。

 

IPFSやFilecoinといったワードが一般に浸透するためには、5Gなど通信のインフラが整うことも前提となります。

 

意識しないうちに進行するテクノロジーの発展は、気付かないうちに私たちの日常をより便利に、より快適にし、いつの間にかそれを新たな日常に変えてしまいます。

 

新しい技術に対する投資はその技術の向上を加速させ、瞬く間に世界中に浸透していくことから、機会損失にならないように注視しておくことが大切です。

#56 データの保存を抜本的に変えるIPFS

◻️IPFS:Inter Planetary File System

 

データ容量の爆発的増加に対応するために開発されたのがIPFSという新しいデータ保管方法です。中央集権的な今までのデータ保管方法に対して、IPFSはファイルを分散的に保管するのが最大の特徴になります。ネットワーク上にデータを散りばめて保管し、利用者がデータにアクセスする際にはそれらをパズルのようにひとつにまとめて取り出すことができるという仕組みです。

 

これまでの中央集権的な保管方法は、HTTPという通信規格を使うため、どうしても国や企業(運営主体)が管理するデータセンター等の保管場所に依存せざるを得ませんでした。

 

一方で、次世代の管理形態でデータを保管するのがIPFSと言えます。IPFSではデータの断片を共有する世界中のコンピュータ同士が対等な関係のネットワークで繋がっており、データの保管場所が分散しているイメージです。そのため、大切なデータを国や企業に依存することなく保管したり取り出したりすることができるのです。

 

利用者が特定のデータを使いたい時は、高速にデータを取り出せる保管場所(ネットワーク)から優先してデータを集めることができるようになっており、利用者は快適なアクセスが可能になります。しかも、重複したデータを排除して保管することができるようになっているため、データ保管そのものが従来よりも効率的になることやファイルが分散されて保管されることから、検閲等でデータへのアクセスが恣意的に遮断されることもなくなるのです。

 

このように、IPFSが目指す次世代のネットワークは安全性と透明性が高く、ユーザーだけでなく企業にとってもメリットが大きいため、世界的なIT企業が自社サービスのプラットフォームとしてIPFS導入を進めることにより、私たちにとっても大きな価値の変容を引き起こすかも知れません。

#55 データ容量の爆発的増加による社会問題

◻️私たちのデータはどこで保管されているのか

 

クラウドとはいえ、多くはデータセンターと呼ばれる場所にあり、そこには大量のコンピュータが接続されています。そして、コンピュータの中にはハードディスクやSSDといったデータを記録媒体が大量に収められているのです。

 

写真はGoogleのデータセンターです。ひとつのラックに14台のコンピューターが設置され、全てが接続されています。このような拠点が世界中に存在することで、私たちが利用するクラウドサービスが支えられているのです。

 

結局のところデータはどこかの物理媒体には保管されているということ。今や、多くの人が無意識にデータをクラウド上に保管するようなってしまっているので、世界レベルで見たとき、データの総量が爆発的に伸びる状況に陥っています。

 

IDCの調査によると、2025年には175ゼタバイトに膨らむと予想されています。ゼタとは、よく知られているデータ容量単位であるギガの1兆倍。写真のグラフの通り、データ容量の増加は驚異的なものであり、従来のクラウドのデータ保存方法はすでに限界に近付いているということが想定できます。

 

次回からは従来のデータ保管方法の問題を解決するために進行しているプロジェクトについて触れていきたいと思います。

#54 暗号通貨ウォレット

Wallet:ウォレットとは、英語で「財布」の意。文字通り、暗号通貨用の電子財布と解釈してください。暗号通貨ウォレットは、ホットウォレットとコールドウォレットに大別できます。

 

◻️ホットウォレット

ホットウォレットとは、ネットワークに接続された状態にあるウォレットのことを指し、暗号通貨をオンライン状態で保管・管理するタイプのものになります。ネット環境があれば、エリアやデバイスを選ばずに自分の暗号通貨にアクセスできるため、迅速に通貨の移動や取引を行うことができます。

 

常にオンライン状態にあるということは利便性が良い反面、不正アクセスやハッキングなどの脅威にさらされていることになるので、セキュリティの強化がとても重要です。

 

◻️コールドウォレット

コールドウォレットとは、ネットワークから切断された状態にあるウォレットのことを指し、セキュリティの観点からいえば最も安全な保管方法と言えます。暗号通貨の「財布」であるウォレットをオフラインで管理することで、不正アクセス等の危険性を大幅に低減することができます。

 

コールドウォレットの種類として、紙に印刷して保管する「ペーパーウォレット」と、専用の機器で管理する「ハードウェアウォレット」があります。

 

ペーパーウォレットとは、その名の通りアドレスや秘密鍵をプリントアウトして保管しておく方法です。感熱紙等、経年劣化のある用紙での保管はお勧めできません。ハードウェアウォレットの方が一般的に普及しており、オフライン状態の専用デバイスで保管・管理を行います。

 

コールドウォレットに関しては、不正アクセスやハッキング等の脅威に対しては極めて安全ですが、窃盗や紛失、機器の故障に気を付ける必要があります。いずれのウォレットにしても、アドレスや秘密鍵の紛失や失念は、暗号通貨を失うことを意味しますので、最大の注意を払ってください。

#53 暗号資産(暗号通貨)と税金

暗号資産取引を行うにあたり、気になるのは税金ですよね。投資を行うにあたって税金の仕組みというのも必要知識のひとつです。今回は暗号資産にかかる税金に焦点を絞って概要を取り上げてみたいと思います。

 

◻️暗号資産取引において税金が発生するタイミング

  

① 所有する暗号資産を売却したとき

② 所有する暗号資産で買い物をしたとき

③ 所有する暗号資産で別の暗号資産を購入したとき

 

いずれのケースも、購入時よりも価格が上昇しており、取引時に利益(差益)が生じたことを前提とします。また、併せて抑えておきたいのは、暗号資産を購入して保有しているだけの状態であれば、価格上昇による含み益があったとしても、課税対象にはならないということです。

 

国税庁の定義では、ビットコイン等の暗号資産取引により生じた利益は原則として「雑所得」に区分するとしています。また、給与所得者のうち「1ヶ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人」を課税対象とし、確定申告を求めています。

 

つまり、確定利益が20万円未満であれば、確定申告の義務はありません。ただし、雑所得は暗号資産に限らず、アフィリエイト報酬や、せどりの利益も含まれており、その合算が20万円を超えていないことが条件です。また、住民税については所得金額に関わらず、別途、申告が必要です。

 

暗号資産、その他の雑所得は給与所得とあわせて「累進課税」が適用されるので、国税庁のホームページにて「所得税の税率」を参考にしてください。

 

ここで、最も気を付けたい暗号資産取引の例をひとつ。

自分が持っていた暗号資産を売却した場合、売却した時点で課税が確定(利益が生じる場合)しますが、その資金で別の暗号資産を購入し、保有していたとします。いざ税金を納める時期になったとき、新たに購入していた暗号資産が暴落して価値が無くなっていたとしても、最初の売却時に得た利益分の税金は納めなければいけません。金額が大きければ大きいほどダメージもデカいので、十分気を付けたいところです。

 

同じ投資でも、暗号資産には分離課税も損益通算も繰越控除もなく、他の投資対象と比較しても税制面で不利な状況におかれています。しかし、日本政府は家計に対して「貯蓄から投資へ」と呼びかけており、これまでも株式や投資信託、FXなどが分離課税の対象になった経緯もあることから、将来的には税制改正の可能性も考えられます。

 

現時点においては、最悪の事態を招かないためにも、投資と税金は1セットと捉え、雑所得の収支管理もキチンとやっておきましょう。うっかりミスでも容赦なく延滞税がかかってしまいます。

 

先日も取り上げた通り、2022年4月より高等学校における「投資教育」が義務化されます。これからの若い世代が、投資や税に関する正しい金融リテラシーを身に付けることにより、次の世代だけでなく、両親や祖父母に対してこれからの投資の重要性を伝えることができるようになればと願います。

  

企業が生き残りをかけ、改善の積み重ねによる業務の効率化や設備投資による売上利益拡大を目的とするように、会社員・事業主として働く個人も生き残りをかけて、売上(=給与)の拡大または異なる収入の源泉を確保することにより、最低限、インフレ率を上回る利益を自ら確保しなければならない時節を迎えているのです。