#140 金融政策とは

景気とマーケットの動きは、政府による金融政策によってある程度コントロールされています。その金融政策を司るのが中央銀行、日本でいえば日本銀行(日銀)になります。その役割は大きくふたつに分かれます。

 

ひとつ目の役割は、「銀行の銀行」としての機能です。メガバンクや地方銀行などの民間銀行は、私たちの預金を通じて資金を集め、それを企業や個人に融資することにより、利子を受け取っています。そして、銀行間の資金の過不足を調整するため、それぞれの銀行に資金を融通するのが日銀の役割になります。

 

ふたつ目の役割は、「物価の番人」です。景気が良くなると物価が上昇することは先述した通りですが、過度な物価上昇はいたずらに「お金の価値」を低下させ、1,000円で買えていたものがいつのまにか2,000円になっていたというような状況を生み出してしまいます。

 

一般的には物価上昇に伴って賃金も上昇する傾向にありますが、賃金上昇よりも物価の上昇が大きくなると、私たちの生活はどんどん厳しくなっていきます。そのとき、日銀はインフレを抑えるための金融政策を実行します。これが「金融引締め政策」と呼ばれるものです。

 

簡単に言うと、市場に出回るお金の量を減らし、カネ余りの状態を解消することです。そのためには金利を引き上げることで企業や個人がお金を借りにくい状態をつくることが必要になるのです。設備投資や個人消費が抑制されれば徐々に物価は下落し、インフレを解消できるという考えです。

 

逆に景気が悪く、物価が下落している局面(デフレ)では、日銀は「金融緩和政策」を実行し、金利を引き下げることで市場に出回るお金の量を増やすことでデフレからの脱却と景気の向上を目指します。「量的金融緩和」という言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。これは、一般的な金融緩和とは違い、ダイレクトに市場に出回るお金の量を増やす(造幣局で無尽蔵にお金を刷りまくる)という政策です。

 

金利をほぼゼロにまで引き下げたのに景気の回復が見込めない、あるいはデフレから脱却できない状況のなか、安倍前首相が諸刃の剣として打ち出したのがこの量的金融緩和政策です。コロナ禍以前の状況でいえば株価は上昇し、不動産価格も回復してきました。

 

現在、外国為替市場では円安が進行中です。日本の基幹産業である自動車や電機産業においては輸出企業が多いため、円安下においてはグローバル市場での価格競争力は増していきます。輸出企業の好調で日本経済全体をけん引し、少しずつでも景気回復の兆しが見て取れるようになることを願いたいですね。

#135 目減りする預貯金

通帳に記載されている額面は同じでも、年々その価値が目減りしていることにお気付きの方は多いと思います。私たちの親世代は銀行や郵便局に預けておくだけで年間6%以上のリターンを得られたことから、預貯金の大切さを説かれるのでしょう。

 

実際に、銀行等にお金を預けることは、金融機関にお金を貸していることであり、当時は「預金=投資」として十分に機能を果たしていました。現在、金融商品で資産を運用することの動機・メリットは効率よくお金を増やすことですが、最も重要なのはインフレ(物価上昇)に備えるということなのです。

 

政府が掲げている年間の物価上昇率は2%なのに対し、預金の金利はほぼ0%、賃金上昇率が2%未満だったらどうなるでしょうか。私たちの立場から見ると、物価の上昇率が年間2%ということは、その分、お金の価値が相対的に下がっていることを意味しています。

 

賃金の上昇がそれに追いついていなければ、どれだけ切り詰めて預貯金を維持したとしても毎年数%ずつ資産が目減りしていくことになります。同じ100万円でも買えるものがどんどん少なくなっていくということです。

 

結果的に資産価値が目減りし続けるため、これまでと同様に預貯金でお金を管理するだけでは、将来の資産を築いていくことは不可能でしょう。なぜなら資本主義経済のセオリーでは、物価が上昇する局面ではそれに伴って金利や賃金も上昇します。これからはそのセオリーが通用しないと想定されるからです。

 

物価が上昇すれば、企業の売上・利益、個人の所得は表面的に増えますが、法人税や所得税の額も増えます。一般的にはそこに金利の上昇が伴うことでバランスを保つのですが、日本政府は莫大な借金を抱えているため、ゼロに近い低金利を継続することにより債務の拡大を抑えることを優先するでしょう。

 

そこに増税まで課せられた日には・・・。年々、預貯金におけるお金の価値は目減りしていること、インフレ率を上回る賃金や金利の上昇が見込めないこと、増税等で必要な支出も増加傾向にあることなど、生活費のコントロールだけでは資産形成しづらい時代に私たちは生きていることを意識しておきましょう。

#122 お金にまつわるエトセトラ

内閣府では毎年、調査員が抽選された任意の国民を訪問して「国民生活に関する世論調査」を実施しています。項目のひとつとして「日常生活での悩みや不安」についてのアンケート調査があります。

 

2017年の調査によると「悩みや不安を感じている」と回答したのは63.1%でした。2022年1月時点での回答は、「どちらかといえば不安を感じている」の回答を含めると、77.6%にのぼりました。

 

また、「悩みや不安を感じている」と回答した人を対象とした「悩みや不安の内容」(複数回答可)では、1位が「健康について」(60.8%)、以下、「老後の生活設計について」(58.5%)、「収入や資産の見通しについて」(55.0%)と続きます。

 

1位の健康問題については現在の収入や資産状況とリンクすることが多く、後に続く「老後の生活設計」や「収入や資産の見通し」といった内容に関しても、現在の国民がかかえている悩みや不安の最たるものは「お金」に関すことと捉えて差し支えないでしょう。

 

2017年5月に経済産業省が配布した資料「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」の内容が一部報道されて話題になりました。

 

人生設計に関するものでは、以下のような記述があります。

「夫はサラリーマン、妻は専業主婦で、定年後は年金暮らし」という「昭和の人生すごろく」のコンプリート率は、すでに大幅に下がっている。

 

同様に、「結婚して、出産して、添い遂げる」、「正社員になって定年まで勤めあげる」に関しても未婚・離婚率の増加、非正規雇用の拡大などにより低下しています。

 

資料は、「日本はアジアがいずれ経験する高齢化を20年早く経験する。これを解決するのが日本に課せられた歴史的使命であり、挑戦しがいがある課題ではないか」と締めくくられています。

 

経済的に満たされなくても、心が満たされていれば人生は充実するといわれることもありますが、収入や資産状況は現在の心の状態を左右することも現実です。

 

問題なのは、国民がかかえている悩みや不安が、先行き不透明な日本の現状を正しく反映したものと判断されることなのです。